エリアの名言
今日はもう夢を見ない。自分の前にいる魚を地味に取るだけ。
松本幸雄 ~東山湖の大会のコメントより~
名言までの過程
大会開始直後、東山湖の東ワンド(地図では北側のすぼまった狭くなっている所)の銀鮭の活性がよく、その周辺の選手たちの釣果がスタートから飛びぬけて伸びていた。それを見てしまうと、どうしても「着水からのただ巻きだけで表層~中層で釣れてしまうのではないか?」と、考えが揺らいでしまうのがアングラーの人情というもの。しかしよく周囲を観察してみると実際に釣れているのは北側の並びからだけ。国道側から狙ってもさほど釣れている様子はない。今いる国道側の並びから移動しようにも、北側の並びに空きスペースはない。となれば開き直って今の場所で釣れるニジマス相手のベストな戦術を地味にこなすだけ。「あの釣れてる光景やパターンは夢まやかし」と割り切った結果、前半検量で同組暫定1位からわずか4本の遅れと、後半巻き返しにつなぐ射程圏内に踏みとどまった。その後、場所移動後の後半で巻き返しがかない、4本差を見事に埋めて優勝サドンデス戦にまでもつれ込む事に成功した。
トーナメントシーンにおいて、他の選手の釣りや釣れ具合を見るのは有効な戦術のひとつ。しかし時として、見えてることがまやかしの情報にもなりうる事もある。同じ場所を狙ってもキャストの方向やライン取りが1メートルずれただけでも釣果が全然変わってしまうエリアフィッシングの繊細さ。時間を区切って行われる事が多いトーナメントで判断をひとたび誤るとただ時間だけが過ぎて、釣果だけがどんどん離されていく。そうなる前にあせる気持ちを抑えて、「ブレない戦略」を組み立て「現状のベストな戦術」を実行する。一時的に前半リードされても最小限度の失点で後半逆転への一縷の望みをつなぐ。エリアでの長年の経験により培われた実力者ならではのエピソードである。
<記事の参考知識・付属データ>