『釣りキチ三平』の表紙のような、魚がハリに掛かったあと水面にジャンプしてハリをはずしてくるいわゆる「エラ洗い」シーン。バス・シーバスなど顕著にみられる行動ですがフィールドトラウトは勿論の事、管理釣り場のトラウトたちもやはりそんな行動を見せてくれます。空中に巨体を翻し飛び散る水しぶき、咄嗟のドラグ調整、ラインブレイクすれすれのやりとり、ビッグファイトはトラウトフィッシングの醍醐味でもあります。
さて今回は水中で掛けた後に魚がジャンプする「エラ洗い」ではなく「トラウトが水面より上にジャンプしてルアーを捕食しにいくのか?」という話。
水面の上2cmで掛けた話
その昔、管理釣り場ドットコムを開設してまもなくの2000年台前半の頃。場所は埼玉県、朝霞ガーデン。流れについている1尺超えのイワナが水面直下で泳いでいた。当時よく教わっていたKさんが「こういう岸際の流れについた魚の釣り方を教えてやる」。といきなり話を切り出してきた。Kさんはかつて栃木の大型エリアでも長年スタッフをしており、こういう特殊な状況の釣り方もいろいろ試してきた方だ。普通に横に引いて来るにしてもほとんどイワナの横を通過する一瞬だけのリアクションワンチャンスしかない。これはなかなかの難問だ。
6フィート半の竿(当時はこのくらいの長さが多かった)で、立ち位置は魚にプレッシャーを掛けないよう、岸際から1.5m程度離れる。ラインはトップガイドから取り合えず20~30cm出す。イワナの頭の上を水に触れないよう空中でマイクロスプーンをくるくる旋回させる。ずっとルアーを見せるのではなく時よりイワナの視界から外れるよう、頭の後ろを通るように調整する。あとは高さと回転半径、回す速度を少しずつ変化させるんだ。やってみな。
まずは自分の想定を超える釣り方に驚いた。半信半疑でいわれるがままにやってみる。最初は回転半径を大き目にとって、徐々にリールを絞りながら回転半径を小さく速く調整していく。何度か目のチャレンジで、丁度ルアーがイワナの頭の斜め後ろ上空付近を通過しようとする所で突如イワナは身を翻して水面上に躍り出てルアーに食いついてきた!喰いついたイワナの心情まではさすがに分からないが、食い気を刺激されたのか、それともイライラしたので追い払うために攻撃したのか?とにかく口を使って空中(水面上2cmくらい)でバイトする事に成功した。
「なっ、出ただろう」と得意げに話しかけるKさんだったが、なんとも言えない苦笑いだったのは今でも忘れられない。
結果。トラウトは水面より上でルアーにヒットするかしないかと言えば「ヒットする」。しかし空中バイトの経験はこれが最初で最後。何回かニジマス相手にこの方法で試してみたものの条件が合わないの成功しない。管理釣り場ドットコムの大会『エリアトーナメント』もかなりの回数をこなしているが放流回で着水前のルアーにニジマスがジャンプして食ってくるというシーンは未だに見たことがない。
ニジマスもイワナも同じサケ科の仲間ではあるが、これはそもそもイワナ属(char)限定の釣り方なのか。それとも本当にまぐれだったのか。この辺は良く分からないフィッシュストーリー。
余談
初夏時期にナイターでフライフィッシングやってると、キャスト中に空中でコウモリが掛かってしまう話はよく聞きますね。